証券取引
証券取引においても、証券会社に、適合性原則違反、説明義務違反、過当取引などの違法行為があれば、損害賠償請求をすることができます。
Q&A
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Q1
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私は定年退職後、証券会社の誘いを受け、はじめて証券会社に口座を開設して、社債を購入しMRF(∗)を持っていましたが、ある時、政府放出のNTT株を勧められ、必ず値上がりするからとのことで大半の資金で25株(約2500万円)購入しましたが、その後、大きく値下がりしたままになってしまい、古い自宅を建て替える資金が足りなくなり困っています。どうしたらよいでしょうか。
(∗)マネーリザーブファンド:証券投資信託の一種だが、その安定性に照らして、銀行・郵便局の預貯金と同視できるもの。
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A
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証券会社が(見込み顧客)を勧誘する際には、顧客の投資属性・投資経験・投資目的・資金性格をよく聞き取って把握し、それに相応しい内容・リスク度・数量(金額)の「金融商品」を推奨しなければなりません。これは「適合性原則」と呼ばれます(証券取引法第43条・顧客勧誘規則第2条)。あなたは、証券取引の初心者で、定年退職後に、いずれ古い自宅を建て替えることを予定して証券投資(社債とMRF)していたようですね。そのような方に、NTT株を1・2株ならともかく、25株=資金の大半を投入することになるほど大量の購入を勧めることは、初心者を株式の「集中投資」に誘うもので、「適合性原則」に反する行為です。その際に「必ず値上がりする」とも言われたようですが、証券会社が、値上がり/値下がりや利益入手について「断定的な判断の提供」を行うことは許されません(証券取引法第42条)。あなたの証券会社の行為は「適合性原則違反」「断定的判断の提供」に該当しますので、損害の回復を求めることは可能です。証券会社と掛け合っても、「必ず」とまでは言っていない、25株(大量)も購入することはあなたが決めたこと(証券会社は強要していない)などと反論して取り合わないことが多いでしょう。その場合は、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。
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Q2
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私は、亡夫が遺した複数の株式を、自宅近所の証券会社に預けました。亡夫生前、私は亡夫の株式取引にまったく関与したことはなく、何の知識も経験もありませんでした。ある時、「ご主人の持っていた株式は古い。新しいものに入れ替えて儲けましょう。私が上手にリードします」と言われ、その誘いに乗りました。その後、(後で判明したことですが)「仕手株」の売買取引に引き込まれて大きな損失を蒙りました。さらにその後、「その損失を取り返す」と誘われて、「外国株」の売買取引に参加しましたが、やはり、かなりの損失を出して終わりました。老後資金を失って途方に暮れています。その損害を回復することができるでしょうか。
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A
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証券会社が、あなたのような素人投資家に「仕手株」を勧誘するとは、もってのほかです。「仕手株」とは、平生は普通の株式なのですが、株価を吊り上げ(その後に売り逃げて)利益をせしめようとする人たち(仕手筋)が深く関与しているために乱高下している状態にある株式で、彼らが密かに売り逃げた時には急落する運命にある、極めて「投機性の高い」株式です。素人投資家が購入するにはまったく相応しくありません。証券会社が、仕手株に投資家を勧誘することは、仕手筋による「相場操縦」に加担する行為として、許されることではありません(証券取引法・行為規制府令第4条)。また、「外国株」は、国内株に比べて投資情報が少ないので(多く得ようと思えば英語能力が必要です)、投資経験が豊富で自主的に情報収集・分析を行う投資家でなければ相応しくありません。あなたの証券会社が「仕手株」「外国株」を推奨したことは「適合性原則」に違反しますので、損害回復を求めることは可能です。しかし、証券会社と掛け合っても、「仕手株」「外国株」を受入れたのはあなただ、と反論して取り合わないことが多いかと思われます。その場合は、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。
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Q3
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私たち夫婦は、夫が身体障害のため稼動できないこともあって、老後生活の安定を第一に考えて、銀行預金より利率のよいものをと思い、証券会社で継続的に中国ファンド・MRFなどを購入し保有していました。その後、(一般的な)投資信託を勧められてそれを購入することもあったのですが、担当社員が交代して以降、次々に、新たな投資信託(とその乗換え)を勧められてそれに応じてきました。私たちに相応しいものを勧めてくれていると思っていたのですが、大きく損失が出た後に判明したところでは、(MRF等を)リスク度の高い投資信託ばかり購入していた(それらを乗換えていた)ようです。この損害を回復することが可能でしょうか。
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A
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「投資信託」は、多くの素人投資家から資金を募集して大きな金額(ファンド)とした上、これを証券専門家(ファンドマネジャー)が一定の投資方針を持って様々な証券を購入・売却等して運用し、(最終的には)その元利を償還する「金融商品」です。最近では、銀行でも、郵便局でも取扱うことになってきています。証券専門家(前出)が運用してくれるという点で、素人投資家向けの金融商品と言えますが、様々な内容・リスク度の投資信託が開発・販売されていますので、自分=素人投資家に相応しいものを選ぶことが大切です。証券会社等からの投資勧誘の場面で言えば、「適合性原則」が重視されなければなりません。とりわけ、購入時手数料(2~3%)が高いこと、第1(低)~第5(高)のリスク度区分が重要です。証券会社等は、営業目標との関係で、購入時手数料を稼ごうとリスク度第5区分の投資信託を盛んに勧誘してくることがあります。あなたの場合も、証券会社を、「あなたに相応しいもの」を推奨してくれているだろうと思っていたところ、どうも「証券会社に相応しいもの」を買わされていたようです。また、各々の投資信託の購入勧誘時に、分かりやすく内容・リスク度を説明されたということもなかったようですね。このような行為は「適合性原則違反」「説明義務違反」に該当しますので、損害を回復することは可能です。しかし、証券会社等は、説明文書は渡した=十分に説明した、受入れたのはあなただ、等と反論して取り合わないことが多いかと思われます。その場合は、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。
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Q4
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私は、亡夫の遺産株を相続したことを切っ掛けに、若干、関心を持って自分自身でも、株式取引を始めました。すると、証券会社の方から、次第に、「これを買いなさい、これを売りなさい(そしてこれに乗換えなさい)」と盛んに勧めてくるようになりました。十分な勉強をしていない私のために私の利益を図って指導してくれていると思ってこれを受入れていましたが、次第に頻繁な売買となり、結局、大きな損失が出てしまいました。後に分かったことですが、損失額の過半は「手数料」なのだそうです。この損害を回復することができるでしょうか。
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A
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顧客が証券会社を信頼しているのをよいことに、証券会社の方から大量・頻繁な売買取引を勧めることがあります。多額の手数料を獲得する狙いが背景にあってのことです。顧客の投資属性・投資経験・投資目的・資金性格を踏まえてそれに相応しい銘柄や売買方法を推奨したのではなく、却って、証券会社の都合・事情を優先させている売買取引ですから、明らかに「適合性原則」に違反するものです。このような売買取引は「過当取引」と呼ばれ、違法な行為とされています(判例法)。その違法性認定要素は、①当該投資家の投資目的などに照らして、②過度な数量・代金額・手数料の売買取引が、③証券会社が(実質的に)主導する態様で行われた、ことです。あなたの事例はこの3要素に当てはまりますので、損害を回復することは可能です。しかし、証券会社等は、あなたは売買取引をよくわかって受入れた、その結果はあなたに属する(自己責任)と反論して取り合わないことが多いでしょう。その場合は、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。