医療過誤・介護

 医療過誤訴訟は高度の訴訟技術が必要ですので、弁護士の中でも医療過誤訴訟の経験豊かな弁護士でないと、有効な主張立証ができません。

Q&A

Q1

 医療過誤訴訟は、時間や費用がかかると言われますが、通常の訴訟と、どこがちがうのでしょうか?

A

 医療過誤訴訟は、医学に関する知識(これを「医学的知見」と言います)が必要となりますが、弁護士や裁判官は、医学に関する知識がほとんどありません。患者側の弁護士が医学的知見を得る方法は、患者側に協力してくれる医師(このような医師を「協力医」と言います)から協力してもらう方法や、医学文献を探す方法があり、これらの方法に頼ることになります。

(1)訴訟前の調査

 そこで、依頼された弁護士は、訴訟提起をする前に、協力医を探したり、協力医に面談をしたり、文献を探して、医学的な過誤があるかどうかを調査することが必要です。この訴訟前の調査だけでも1年以上の期間を要することがよくあります。

(2)証拠保全

 また、診療に関する記録やフィルムなどは全て医療機関が有していますので、それらの記録やフィルムなどを取り寄せる手続が必要です。この手続の一つに証拠保全というものがありますが、この手続だけでも数か月を要します。

(3)鑑定

 さらに、訴訟を提起した後は、裁判官に医学的知見を理解してもらうために、分かり易い証拠を準備したり、何度も裁判官に医学的知見を説明したりしますので、通常の訴訟の2倍以上の日時を要することがよくあります。また、訴訟になってから鑑定を行うこともあります。鑑定を行う場合、鑑定医をさがすだけでも数か月を要することもあります。また、鑑定医となった医師も、自分の仕事の合間に鑑定して鑑定書を作成しますので、鑑定書ができるまで何か月もかかることになります。

 このような理由から、医療過誤訴訟は、他の訴訟に比べ、多くの費用と期間を必要とします。弁護士が依頼者から相談を受け、訴訟を提起し、判決に至るまでの期間は、短くて2年は必要です。

Q2

 医療過誤の紛争について、1年より短い期間で解決する方法はないのですか?

A

 医学的知見に関する対立がほとんどない事案であって、損害額が少ない場合(例えば100万円未満だとか、多くて200万円ほどの場合)は、裁判所の調停手続や、大阪弁護士会内にある民間総合調停センターを利用すれば、早期に解決する場合があります。しかし、これらはあくまでも話し会いですので、患者側も金額でできるだけ譲歩する必要があります。また、医療機関側が、話し会いはしないと言って、最初から出席を拒否する場合もあります。この場合は、調停や民間総合調停センターでの解決はできません。

Q3

 多くの費用がかかると言われますが、どのくらいの金額が必要ですか?

A

 Q1で説明しました訴訟前の調査や証拠保全を弁護士に依頼した場合の弁護士への報酬は、20万円から30万円となります。

 また、調査や証拠保全により証拠を収集した後、訴訟を提起する場合は、さらに弁護士に着手金を支払い、さらに訴訟が終了したときは報酬金を支払う必要がありますが、その額は、医療過誤訴訟が多大な労力を要しますので、通常の訴訟の場合の報酬(報酬基準の頁を参照して下さい)に比較して3割程度高くなることが多いです。

 また、協力医に支払う報酬も依頼者が負担しますが、その額は事案によって異なります。協力医に意見書を書いて貰うことまで依頼した場合は、少なくとも30万円程度を要します。

 さらに、裁判になってから鑑定をした場合、その鑑定費用は、50万円ほどかかります。ただし、その鑑定を原告被告の双方が申請した場合は、原告は、その半分を負担すれば足ります。

Q4

 訴訟にかかる費用を分割払いにしてくれたり、援助してくれる制度はないのですか?

A

 分割払いですが、依頼者に定期的な収入があれば、弁護士への報酬として、訴訟前の調査から訴訟終了までの間毎月5万円を支払う、というような分割払いでの契約もできますので、弁護士に相談してみて下さい。

 また、依頼者の収入が一定額以下の場合は、日本司法支援センター(法テラス)に援助申込をして要件を満たせば、弁護士の着手金を立て替えてくれます。ただし、日本司法支援センター(法テラス)の制度を使って依頼ができるかどうかは弁護士によって異なります。

Q1で述べました訴訟前の調査については、日本司法支援センターでも立て替えはしてくれませんので、これは依頼者ご自身で負担する必要があります。

Q5

 協力医は、誰が、どうやって探すのですか。患者が自分で探さないといけないのですか?

A

 患者側の弁護士に対して協力医を紹介してくれる団体があります。また、医療過誤訴訟の経験が多い弁護士は、従来からの訴訟などを通して知り合った医師に協力を頼むこともあります。ですので、患者様がご自分で探す必要はありません。

Q6

 医療過誤訴訟では、勝訴する率が非常に低いと言われますが、本当はどうでしょうか?

A

 確かに医療過誤訴訟では勝訴率は低いと言われますが、訴訟前の調査をしっかりと行えば、全部敗訴という確率は非常に低くなります。また、患者側に不利な判決になりそうな場合は、和解をして、そのリスクを減らすこともできます。