意外と身近にあった、「国籍差別」

弁護士原 啓一郎

 国籍差別にまつわる事柄に、いくつか取り組んでいるが、そのうちのひとつをご紹介したい。どことなく市井にありそうな事柄にも思えるが、しかしよく考えてみると、それはないのではないの?と問わざるを得ない内容である。子どもの教育にも絡む事柄である。

高校のグラウンドの明渡裁判

 大阪朝鮮高級学校という学校がある。高校サッカー等で全国大会でもお目にかかる「大阪朝鮮」高である(個人的に、国見高や野洲高との激闘が記憶に残る)。そこが今、なんとグランドの一部(と外周のブロック塀その他)を「撤去」して「明渡」すよう東大阪市から求められている。事の発端は、当該土地が、高度経済成長時代に策定された土地区画整理事業の際に「減歩」される対象となったことに遡る。土地区画整理事業とは、皆が少しずつ土地を出し合って、道路や公共施設など市民生活に必要な設備を整備する、そうすると地域全体の地価も上がるので、個々の私有地の面積は減るが経済的には損しない(だから憲法違反でもない)、これを強制的にやる、というものである。本件事業は95年に終了したが、本件土地について物理的な「減歩」は行われておらず、学校側が「買い取る」内容の交渉が継続されてきていた。また、当該土地は最早同校のグランドの一部として使用する以外の使い途は見当たらないという状況である。

 そもそも、学校というのはまさしく「公共施設」であり(関連法令にもそう書いてある)、出し合われた土地を活用して整備される対象である筋合いのものである。実際、本件事業においてそうやって新規整備された学校がいくつもある。また、学校のグランドとして使用している土地について、面積が減ってもその分地価が上がれば価値は減少しないとは言えない。そうするとこれは国籍による差別ではないのかと言わざるを得なくなってくる。さらに、法形式的にも、法律に「特別の措置」をとって良いという規定があり、学校だからとしてこの規定を適用すれば、行政の面子をつぶさずに事態を収拾させることもできた。何より、子どもたちにとってかけがえのない学校のグランドが用をなさなくなってしまう(何度か足を運び、実際の使用状況も見て、つぶさにそう思う)のであり、これを考えることは余りにも忍びない。明渡しをさせても用途のない土地であることも考えると、周囲の大人たちの知恵で解決すべきものであることは明白である。

 この土地は絶対に子どもたちに残さなければならない、そういう思いで取り組んでいる。