近弁連大会で「訴訟当事者の権利宣言」が採択されました!

2025年12月26日

弁護士国府 泰道

1 大会宣言として採択
2025年11月28日の第37回近畿弁護士会連合会大会で「訴訟当事者の権利宣言」が採択されました。
約50年前頃から、医療の分野では「患者の権利宣言」が提唱され、患者が医療の主体であるといった考え方が医療の世界を大きく変えてきました。私たちは、訴訟当事者の権利を宣言、確認することによって、司法の分野でも訴訟実務のありかたを変えていきたいと願い、この度、大会宣言をすることによって、訴訟当事者の権利を提唱することになったものです。おそらく本邦初の宣言として、歴史に刻まれるのではないでしょうか。
最近の民事訴訟は、裁判所が証人調べを認めなかったり、尋問時間を制限したりすることがあります。また、高等裁判所では1回目の期日に結審する例が増えています。民事訴訟のIT化や、審理期間を限定した法定審理期間訴訟手続の新設により、主張・立証の制限や審理の形骸化が進むのではないかと危惧されています。民事訴訟は迅速であることも必要ですが、迅速化偏重になって必要な審理がないがしろになっては本末転倒です。
充実適正な審理によって事実を解明し、当事者が納得のいく訴訟を実現するために、「訴訟当事者の権利」を確認・尊重することを提唱するものです。

2 訴訟当事者の権利とは
宣言では、以下の8つの権利からなる訴訟当事者の権利を提唱しています。それぞれの権利の内容については、大会宣言でご確認ください。ここでは権利のリストのみを紹介します。

1 訴訟当事者の権利を尊重した丁寧な訴訟を求める権利
2 公正、適正、充実、迅速な審理を求める権利
3 弁護士の民事弁護を受ける権利
4 費用・法律扶助についての権利
5 手続に関する情報の提供と説明を受ける権利
6 当事者の意思の尊重
7 審理の充実を求める権利
8 法的審問請求権
  訴訟当事者は、下記の権利を中心とした法的審問請求権を有する
 (1)弁論権
 (2)証明権
 (3)十分な理由のある判決を求める権利

3 当事者の権利宣言によって訴訟実務をどう変えていくのか
今日の訴訟実務においては、充実適正な審理の実現のために、弁論権、証明権(証拠の取調べを求める権利)の保障が重要だと考えられます。
とりわけ、証明権(証拠の取調べを求める権利)については、訴訟実務では民事訴訟法181条の解釈として裁判所に証拠採否の裁量があるかのように解釈運用されていますが、権利宣言では、立法の経緯やドイツ民事訴訟法との比較法の観点から、当事者が申し出た必要な証拠は取調べなければならないことが原則であると説明されています。
大阪弁護士会が、2025年2月5日に開催したシンポジウム「『法的審問請求権』という権利をご存じですか?」では、「証拠申出補充意見書のモデル案」を提案し、そこには民事訴訟法181条の解釈についての法的見解も記載されています。こういったものを武器に、充実適正な審理を求めていくことが考えられます。
弁護士には訴訟当事者の権利を実現する実務を目指していくことが求められる時代になったといえます。