『住宅営業マンぺこぺこ日記 「今月2件5000万!」死にもの狂いでノルマこなします』(屋敷康蔵)を読みました。
私は欠陥住宅訴訟を多く手がけていますが、そのほぼ全てを住宅取得者側で行っています。ですのでハウスメーカーの内情を知らないのですが、そのような私にとって本書はとても勉強になりました。
それになにより、本書はとても面白いです。人の欲望について、労働について、組織について。著者の人生が強く反映され、3回泣けました。住宅について考えるなら、ぜひ読んでみてください。特に、ハウスメーカーに行く前に!
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さてハウスメーカーの内情ですが、まずは、「キャンペーン」について。
「本来オプション品の2階トイレと食洗機がキャンペーンでつきます」「じつは、この2階トイレと食洗機はここ半年、どんなお客にもつけているサービスで、今後も継続予定。つまり、いつもどおりのサービスがいつのまにか特別対応に様変わりしているわけだ」「ただし、これは営業マンの裁量に任されているので、表には出していないサービスである」
いやいや。「表には出していない」なら、一応は景品表示法違反にはならない(「広告その他の表示」ではない)のかもしれませんが…。お得なようでお得でない。住宅メーカーの「キャンペーン」には要注意です。
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次に「仮契約」について。金額が完全に合意できていなくても、工事請負契約を「仮契約」と呼んで、とりあえず契約させてしまうのです。
「そもそも『仮契約』『本契約』などというものは存在しない」
いやいや。わかってやっとんのかい!
「『最終的に金額に折り合いがつかなかったら本契約を結ばなければいい』という安心感。本契約を結ばないといっても、さらに1カ月以上の打ち合わせを続けて間取りや資金を煮詰めた挙げ句、テーブルをひっくり返すお客はまずいない」
いったん決断さえさせれば、その後は断られなくなる心理を利用した勧誘テクニックです。『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ)で悪用厳禁とされている古典的な手口ですが、現役で使われています。
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あの手この手ですが、そもそも、住宅は勧誘されて買うものなのか。
「家を買うのに10万円の手持ちもないのはそもそも入口から間違っているように思われる。こういう感覚で住宅ローンを組めば、のちのち苦しむことになるのは明らかだ。むろん、そういう人に買わせようとするわれわれ住宅メーカーの問題でもあるわけだが」
いやはや、いわゆる、「お前が言うんかい!」 消費者教育の重要性が分かります。ちなみに私見によれば、どんな住宅ローンでも、人生の自由度を奪いますから、お勧めできません。空き家が多発するご時世に、賃貸は合理的な選択なのです。