─詐欺的なパチンコ攻略法の雑誌広告─(大阪地裁平成22年5月12日判決)
「パチンコ攻略法情報の提供」とか、「競馬情報の提供」名目で高額の「情報料」を詐取するという詐欺取引が世に横行しています。パチンコに勝ちたい、競馬に勝ちたいといった庶民の射幸心をくすぐって、情報提供料の名目で数十万円から数百万円を詐取するものです。これまでそのような詐欺的なパチンコ攻略法会社に対する訴訟は全国でありましたが、会社を潰して逃げてしまうので、被害回復できないといった例も多数ありました。そして次々と新しいパチンコ攻略法詐欺会社ができてきます。このようなモグラ叩きをしていても虚しさが募るばかりです。
このような攻略法詐欺会社が顧客をゲットする手段が雑誌広告やメール広告です。そこで、この種の被害を元から断つためには、パチンコ攻略法を雑誌広告から排除することが必要だと考えました。平成20年5月に大阪の弁護士たち8人で弁護団を結成し、雑誌社と広告代理店を相手に訴訟を提起しました。おかげさまで、平成22年5月12日、大阪地方裁判所で勝訴判決を獲得しましたので、その報告をします。
これまで、新聞や雑誌といった媒体に掲載された広告の内容が虚偽であるとして、雑誌社などに対して賠償が命じられた例は1件あっただけで(東京地裁昭和60年6月27日判決)、多くの事例は負けていました。法理としては、最高裁第3小法廷・平成元年9月19日判決が次のように述べているのが参考になります。「(新聞社や取次広告社は)新聞広告のもつ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって、読者らに不測の損害を及ぼすべきことを予見しまたは予見し得た場合には、真実性の調査確認をして、虚偽広告を読者らに提供してはならない義務がある。」(最高裁民事判例集157号601頁、ジュリスト950号76頁参照)。
本判決も、この最高裁判決の法理を踏まえたもので、次のように判断しています。
パチンコ攻略法情報の広告については、攻略法の使用によって大当たり確率が369分の1から1.36分の1に上がるといった記載や、この攻略法を使った人が9万個(62箱)の出玉を得たといった記載などがあり、いたる所に一定時間パチンコをすれば大当たりが確実だといった記載が充ち満ちているところ、これが事実だとしたらパチンコ店は多額の損害を被るから直ちに善後策を講じなければならなくなるが、そのような事態はなかったことなどから、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があったと認定しました。
打ち子(サクラ)募集広告については、パチンコを打つだけで最低でも1日5万円の支払を受けられると記載しているが、そのような広告が多数載せられていることからすると、世にそのような仕事が多数存在することになるのであるが、実際にはそのような事実はないから、上記記載自体から広告内容の真実性に疑問を抱くべき特別の事情があったと認定しています。
そして、被告の広告代理店及び雑誌社は、真実性に疑問を抱くような事情がありながら広告について何らの調査・確認をしていないということで、賠償責任が認められました。ただ、残念ながら、賠償金については、5~7割の過失相殺がされてしまった。このような事件の被害者には同情の余地がないということであろうか。
私たちは、この判決をテコに、パチンコ攻略法の広告を掲載している他の雑誌社に対しても警告状を送付し、今後も掲載を継続するなら訴訟も辞さないといった姿勢で対峙していきたいと考えています。
迷惑勧誘メールの規制も必要
最近、迷惑メールを通じての勧誘被害が増えています。
出会い系サイトや詐欺勧誘のための違法なメールは、本来は未承諾広告として違法です。しかし取締りの効果は上がっていません。このような詐欺業者は、私書箱や転送電話を利用していることが多いので、私書箱や転送電話の側面から規制することも考えられます。
私書箱については犯罪収益移転防止法が本人確認を義務づけていますが、本人確認だけでは実効性のある取締はできていません。これらの匿名犯罪を助長するシステムの規制を強化・工夫する必要があるのではないでしょうか。