今年も年末となりましたが,この1年も多種多様な事件のご依頼を受けて参りました。
私が比較的多く相談・依頼をいただいている事件の種類の一つとしてエンタメ法務というものがあります。
エンタメ法務とは,エンターテイメントに関わる芸能事務所や芸能活動をする方を当事者とする法律問題を扱う仕事です。
エンタメの世界では古い業界慣習がいまだに残っているところもあり,芸能活動をする方の法的な権利が十分に守られているとは言えません。
また芸能事務所においても法令遵守・コンプライアンスを実現して健全な運営をしたいと考える事務所が増えてきたものの,法的な知識が不十分でどのような体制をとればよいか悩んでおられる経営者の方も多いと思います。
弁護士として芸能事務所や芸能活動をする方に対して法的な支援をすることが「エンタメ法務」です。
エンタメ法務における紛争の事例としては,芸能事務所が所属タレントの独立や移籍を認めない・契約期間中途での専属マネジメント解約について多額の損害賠償を請求する・独立や移籍をしたタレントを共演NGにするなどの圧力を各所にかける・退所後の芸能活動を制限する・所属時の芸名を使用させないなどのケースが挙げられます。
私は,エンタメ法務の中でも,関西のアイドル(「地下アイドル」と呼ばれる小規模なライブハウスでライブをするアイドルのことが多いです)に関して,アイドル側からも事務所側からも相談や依頼を受けることが多くなりました。
アイドルにかかわるエンタメ法務では,上記のような紛争も多いですが,他のエンタメ法務にはない特殊なケースとして,アイドルの応援に疑似恋愛的な要素があることから専属マネジメント契約において「恋愛禁止条項」が定められることがあり,タレントの自己決定権の観点からそのような条項の有効性が争われるケースがあります。
また,最近はご縁をいただき,特定のテーマをもった店内でキャストが接客をするコンセプトカフェ(いわゆるコンカフェ)の経営者の方から,店舗運営に関する法律相談(風営法に関するご相談や所属キャストとの契約上のトラブルなどが多いです)をご相談を受けることも多くなってきましたが,これも広い意味ではエンタメ法務といえます。
東京では有名な芸能人や大手の芸能事務所が多く,エンタメ法務を多く扱っている弁護士もいるようですが,大阪をはじめとする関西では,このようなエンタメ法務に関わっている弁護士はそれほど多くないのではないかと思います。
エンタメの世界では,業界における独自の慣習や制度が多く,エンタメ法務を取り扱うにあたっては,関連する法令のみならず,業界の事情を踏まえた上で処理をする必要があります。また,エンタメが人を楽しませる仕事であることから,法的なトラブルを抱えていることを世間に知られること自体がイメージダウンになるというリスクもあり,訴訟などで表沙汰にすることなく解決しなければならないケースも多いです。
このようにエンタメ法務は他の分野の事件と異なる特徴がありますが,私自身,関西のアイドルやコンセプトカフェの実情をある程度把握していますので,それを踏まえた相談対応や事件処理を行っています。
今後も弁護士として法律的な側面から関西のアイドル業界・エンタメ業界の発展に微力ながら尽くしていきたいと考えています。

