HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害訴訟の現況

弁護士下枝 歩美

 太平洋レターニュース第54号(2017年1月発行)で、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害訴訟について執筆させていただきました。訴訟が提起されたのは、2016年7月27日です。提訴した当時は、マスコミにも多く取り上げられ、世間からも大きな反響がありました。

 あれから3年以上が経ちましたが、裁判はまだ係属中です。被害者らは未だに副反応に苦しんでおり、弁護団としても早期解決を目指していますが、判決までには、もう少し時間がかかりそうです。
 時間の経過とともに、マスコミから取り上げられることも少なくなり、世間からの関心も薄れつつあることを危惧しています。裁判で解決できることは限られており、被害者らが求めている真の救済は、治療方法の開発、治療体制の確立です。これを実現するためには、社会的な政策が必要不可欠です。社会を動かすために、より多くの方にこの問題について知っていただき、関心を持っていただけるよう活動していきたいと考えています。

 また、被害が日本だけで起こっているかのようなことが言われていますが、それは事実ではありません。2018年3月には東京で、国際シンポジウム「世界のHPVワクチン被害は今」が開かれました。集団訴訟が提起されているコロンビアを始め、スペイン、英国、アイルランドの被害者団体からゲストを迎えました。シンポジウムに参加して、驚いたことが、どの国においても、被害者らが学校や医療機関から冷遇を受けていること、政府が真摯な対応をしていないという点において共通していたことです。
 アメリカでも、HPVワクチンを原因とする補償裁判が提起されており、認められ勝訴している例も複数あります。
 日本では2013年4月にHPVワクチンが定期接種化されましたが、そのわずか2か月後の6月には、積極的に勧奨することが中止されています。現在でも、HPVワクチンを無料で接種することはできますが、新たにワクチンを接種する人はほぼいません。
 国はワクチンと副反応の因果関係を否定していますが、積極的勧奨を中止して6年以上が経過し、未だに再開されない現状との矛盾を感じます。

 次回の大阪第14回期日は、2020年3月5日午後2時です。期日では、被害者自身の実際の声を聴いていただく意見陳述や、弁護団の主張をまとめたプレゼン等を行っており、充実した内容の傍聴をしていただけるよう努力しています。この記事を読んでくださり、少しでも多くの方に関心を持っていただければ嬉しく思います。