マンションの非居住者に追加負担金を支払わせる管理規約は有効か

弁護士脇田 達也

1 マンション管理と非居住者

 「マンションは管理を買え」という言葉もあるくらい、分譲マンションにおいては管理が重要です。適切な管理がなされていれば躯体の寿命が延びますし、良質な居住環境につながって中古価格も下落しにくくなるといえるでしょう。
 ここで、マンションは自治が基本ですから、区分所有者(=分譲マンションの所有者)が実際に労力をかけて、具体的には何年かごとには理事を務めて、マンションを適切に管理する必要があります。
 ところが、区分所有者が、自分のマンションを貸しているなど、そのマンションに住んでいない場合は、理事を務めることが困難なため、理事としての労力を負担しないことが多いです。つまり、非居住の区分所有者は、労力を負担せずに、良い管理を享受する場合もあるといえます。

2 事案

 そのため、大阪市に所在する、とある大規模マンションは、そのマンションに自ら居住しない区分所有者は(全員が負担する一般管理費8500円、修繕積立金9000円のほかに)、月額2500円の住民活動協力金を負担すべきとするように、マンション管理規約を変更する総会決議をしました。
 さて、このような総会決議は有効でしょうか。これは、最高裁平成22年1月26日判決で問題となった事案です。

3 最高裁の結論

 まず結論を述べますと、平成22年1月26日判決は、2500円であれば有効としました。
 具体的には、次のように述べています(かなり抜粋しています)。
 「それらの不在組合員は、〔…〕活動について日常的な労務の提供をするなどの貢献をしない一方で、居住組合員だけが、上告人の役員に就任し、上記の各種団体の活動に参加するなどの貢献をして、不在組合員を含む組合員全員のために本件マンションの保守管理に努め、良好な住環境の維持を図っており、不在組合員は、その利益のみを享受している状況にあったということができる」
 「いわゆるマンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及びその費用は、本来、その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきもの」
 最高裁は上記等の理由をあげて、非居住者に2500円の住民活動協力金を負担させる総会決議を有効としました。

4 訴訟の経緯

 なお、上記最高裁判決に至るまでの訴訟の経緯も重要と思われます。
 上記マンションは、当初、住民活動協力金を5000円とする規約変更を決議しました。そして、決議に反対して5000円を支払わない非居住区分所有者に対し、マンション管理組合が7件の訴訟を提起し、第一審では認容と棄却が4対3に分かれました。その後、一部の控訴審で月額2500円の和解が勧告され、上記マンションはこれを受けて、月額2500円とする規約変更を決議しました。上記最高裁判決は、2500円も支払わなかった区分所有者についての判決です。

5 非居住の区分所有者

 最高裁判決はある程度の規範性を有するため、上記の結論が出たことの意味は大きいといえます。同程度のマンションで、同程度の負担金を決議した場合、法的に無効とされるおそれは少ないでしょう。
 しかし、上記判決で非居住者側が主張したところですが、居住者であっても理事になることを拒絶する、あるいは高齢であるため不可能な区分所有者もおり、非居住者に負担金を課すことが直ちに公平かどうか、検討を要します。小規模なマンションでは、個別的な事情も考慮されるでしょう。さらに、反対を押し切って非居住者への負担金を決議しても、現に支払ってこなければ、回収のためのコストがかかってしまいます。
 結局のところ、マンションは自治が基本です。良いマンションにするため、十分話し合って合意するという以外にはないでしょう。