仕組系投資商品:現代版トロイの木馬

弁護士三木 俊博

 シュリーマンの「古代への情熱」で発掘された「トロイの遺跡」。そこに眠っているはずの「トロイの木馬」が現代に蘇ったと言えるのが、証券会社が「人気商品」と悦に入っていた「仕組外債」「仕組投信」など「仕組系投資商品」(他に銀行の「仕組預金」もある)。いま、日本のみならず欧米でもその被害が広がっている。PIABA会誌に掲載された(∗)アメリカの状況を紹介したいと思います。

(∗)Private Investors Arbitration Bar Association:同会誌2011年第1号所収論稿の抜粋翻訳:若干意訳的なところあり。

仕組商品が一般投資家層にも蔓延:高齢者資産に入り込み

 証券会社は高齢顧客に「仕組商品」として知られている複雑な投資商品を販売してきた。仕組商品は2007年から2008年に掛けてほぼ破滅的なまで証券業界を混乱させたブラックボックスと言える。証券業界はいまなお仕組商品を小口化して多くの投資家に販売し続けている。或るものはリスクを或る程度に抑えることができる一方で、内容を理解し難いものとなっており、疑うことを知らない投資家に多くのリスクを提供している。非常にリスキーで、コストも高いことから、損失を蒙ることが殆ど間違いなしと言える。それらの商品は高齢者の金融資産の中に「トロイの木馬」として入り込み、老後資金を食い荒らしている。証券会社は既往の損失を埋めることができない個人投資家に対して、これらのハイリスク商品を販売し続けている。多くの個人投資家は、2008年に保有していたデリバティブを内包する複雑な投資商品によって蒙った多大な損失を回復するべく今なお苦悩している。しかし、主要な証券会社が、税金による財政資金と連邦準備銀行(わが国で言えば日本銀行に当たる)によって、公的救済を受けた後でも、なお今日まで、これらのリスキーで複雑な投資商品の販売を継続している。

もともとは「洗練された機関投資家」向け:見栄え良く仕立て直し

 証券業界は、以前には「洗練された機関投資家」に限って販売され、同投資家の数十億ドルに上る構成資産(ポートフォリオ)の中のごく一部を占めるに止まっていた、複雑で難解なデリバティブ商品を、巧妙な手口で販売している。ここ数年、これら複雑に「仕組まれた」デリバティブ商品(端的に言えば他の投資商品に基づいた「賭博」)は、現下の低金利状況の中で高い利回りを渇望している多くの一般投資家のために、証券業界によって「仕立て直されて」販売されている。

複雑で難解しかも高いリスク隠れている:まるで時限爆弾

 しかし、自分に販売されている投資商品がどのようなものかを十分に理解しており、これらの投資商品が「時限爆弾」のようなものだということを理解している投資家はごく少数に止まる。残念ながら、良く見受けられることだが、これらの投資商品が高齢者に販売されたとき、その投資にはリスキーなデリバティブが内包されていると共に利回り保証がないことから、老後生活の経済的安定を脅かすこととなる。投資家が損失を蒙ったと気づいたときでさえ、その損失を回復する努力をくじくように仕組まれている。

 仕組系投資商品(仕組商品)には、いずれも目先に「高い金利」を掲げられていますが、実は、その奥に「大きなリスク」が隠れています。それはリスクの高い「オプション取引」を組み込んでいるからです。オプション取引の知識・経験を持たない方は「高い金利」の裏に「大きなリスク」が潜んでいることに気づきません。素人投資家は、仕組商品の目先の高金利に惑わされることのないよう注意を怠らないことが必要です。なお、仕組商品の被害救済の動向については、下記ウエブサイトも参考にしてください。
【全国証券問題研究会】http://www2.osk.3web.ne.jp/~syouken/