あなたのマンションが被災したら

弁護士脇田 達也

 私は、欠陥住宅関西ネットの幹事を務めています。同ネットは、阪神淡路大震災をきっかけに誕生し、欠陥住宅をなくすために活動してきました。
 この度の大震災では改めて自然の猛威に思いをいたすとともに、やはり日本では欠陥住宅は決して許されないのだとの思いも、また強くしました。
 さて以下では、分譲マンションが地震によって被害を受けた場合にどうなるか、解説してみます。

1 補修 軽微な変更か、著しい変更か

 補修ですむ場合、共用部分の軽微な変更にすぎないのであれば、総会の普通決議で可能です。
 補修でも、避難路の変更、構造に変更を及ぼす耐震補強など、共用部分の著しい変更を伴う場合は、総会の特別決議が必要となります。
 特別決議には、区分所有者数の4分の3、かつ、議決権(通常は床面積割合)の4分の3以上の賛成が必要です。ここで、総会の出席者の4分の3ではないことに注意が必要です。つまり、委任状を出さずに欠席された方は、反対したことになってしまうのです。4分の3という基準は意外に厳しく、特に地震後に連絡が取りにくくなる状況では、苦労することになります。

2 復旧 小規模滅失か、大規模滅失か

 区分所有建物の一部が滅失した場合に、元どおりにするには、復旧決議が必要です。この中でも、建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときを小規模滅失と呼び、それ以外を大規模滅失と呼びます。
 小規模滅失の場合は、(規約に別段の定めがないかぎり)普通決議によります。この場合の費用は、復旧決議に対する賛否にかかわらず、区分所有者全員で持分割合に応じて負担します。反対者に買取請求権はありません。
 大規模滅失の場合、復旧するには特別決議が必要です。この場合、決議に賛成しなかった者は、賛成した者に対して、買取請求をすることができます。買取価格の基準について争いがあります。

3 建替え

 地震で被害を受けた建物を、元どおりに復旧するのか、建替えるのか、紛糾することがあります。阪神大震災でも、複数の訴訟が提起されました。
 建替えについては、従来あまり議論されていませんでしたが、阪神大震災、さらに、老朽化マンションの増加に伴い、議論が活発になっています。
 ここでは、そもそも建替えのためにどういう手法があるのか紹介し、さらに、建替えに際してどういった問題点があるのかを示します。

ア 手法

 建替えの手法には、(1)建替え円滑化法を適用せず、事業者が区分所有者からいったん全部譲渡を受けて建替え事業に取り組む、従来型の等価交換方式、(2)関係者全員の合意のもとに進める、建替え円滑化法5条2項の個人施行方式、(3)建替え円滑化法5条1項のマンション建替え組合を設立して行う組合施行方式、の3つがあります。
 (1)・(2)・(3)の順で手続が複雑となります。(1)・(2)は全員の合意が前提です。(3)では、5分の4以上の特別決議が必要ですが、反対者への手当を円滑に行うための規定が用意されています。

イ 問題点

 従来は、地価の上昇や容積率の緩和(建替えの際に増床してその部分を売る)等により、還元率が100%を超える(すなわち、区分所有者は無償で従前床面積を確保できる)建替えが多かったのです。しかし、これからはそうはいかないでしょう。地価は下がっていますし、容積率はもう限界です。
 一方にはマンションの老朽化・スラム化を防ぐ必要があり、他方には新たな費用負担が不可能な高齢者等の居住を確保すべき要請があります。
 反対者には売渡請求権が発生しますが、その金額について争いがあります。不十分な額になってしまうのではないかという懸念があります。つまり、高齢となって、新たなローンは組めないし、かといって反対すると不十分な金額で住処を失うおそれがある、ということです。

4 再建 被災マンション法

 全部滅失したマンションは、区分所有法を適用することができず、民法の共有の規定が適用されるので、1人でも反対者がいると建替えができないことになってしまいます。そこで、平成7年、被災マンション法が制定・公布されました。
 議決権の5分の4以上の決議により、再建ができます。