過払金返還請求について

弁護士日髙 清司

~サラ金業者に払いすぎていませんか?

1 グレーゾーン金利とは?

 お金を貸し借りする際の金利について、利息制限法は、元本が10万円未満の場合は年2割、10万以上100万円未満は年1割8分、100万円以上は年1割5分と定めています。この制限利息を超えた支払いは元本へ充当され、さらに元本を超えて支払った場合には返還を求めることが最高裁判例で認められています。また、出資法で刑罰を科せられる金利が別に定められています(現在は年29.2%)。つまり、民事的には違法であるにもかかわらず刑事罰を科せられない範囲の金利部分が発生します。これをグレーゾーン金利と言います。

2 貸金業規制法43条みなし弁済とは?

 多くのサラ金業者はグレーゾーン金利で貸し付けています。サラ金問題が社会問題化して制定された貸金業規制法で、厳格な要件を備えた場合には、利息制限法を超える金利でも、有効な利息の支払いとみなす規定が定められました。これをみなし弁済(規定)と言います。貸金業者は大手を振って利息制限法を超える金利で貸し付け、空前の利益を上げるようになり、一方、多重債務者が増加し、再び社会問題化しました。

3 みなし弁済に関する最高裁判例

 みなし弁済規定の適用を主張するサラ金業者に対し、負債整理を担当する弁護士は、その要件を満たしていないとして訴訟で争い、多くの判例が積み重ねられました。そして、平成16年2月20日に最高裁第二小法廷は、みなし弁済規定の適用要件は厳格に解釈すべきであるとして、その要件の一つとして必要な書面(貸金業規制法17条書面)には所定事項がすべて記載されている必要があると判示しました。また、平成18年1月13日に第二小法廷は、期限の利益喪失特約の一部を無効であると断じ、同条項のもとでの支払いは任意の支払いではないとして、みなし弁済規定の適用を認めませんでした。これら最高裁判決により事実上みなし弁済規定は適用されなくなったといえるでしょう。

4 充当に関する論点-過払金額の違い

 一旦発生した過払金が別口の借入金の返済に充当されるか否かによって、返還される過払金の額が異なります。 平成19年2月13日第三小法廷判決は、①基本契約が締結されていない場合において、②第1貸付の過払いが発生した後に第2貸付の債務が発生した場合、特段の事情(ア基本契約が締結されていたのと同様の貸付が繰り返されており、第1の貸付の際にも第2の貸付が想定されていたとか、イ貸主と借主の間で過払金の充当に関する特約が存在する、など)がない限り第1貸付の過払金は第2貸付の債務には充当されない、と判示して、当然充当を認めませんでした。
 この判決の事案は、貸付と返済を継続的に繰り返していたケースではありませんでしたが、具体的にどのような場合に「特段の事情」があるとして充当が認められるのか、必ずしも明確ではありません。また、当然充当を認めなかった点について、充当に関する過去の最高裁大法廷判例に反する、との批判もあります。
 さらに同年6月7日第一小法廷判決は、2つのクレジットカード契約(各基本契約)が併存している場合で、このカード契約における返済方法等の事実関係を摘示したうえ、本件各基本契約は、「…新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいると解するのが相当」として、結局原審と同じく充当を認めました。
 上記2つの最高裁の判示内容から充当に関する明確な基準を導き出すことは困難で、今後も下級審においても判断が別れる可能性があります。

5 貸金業規制法等の改正

 貸金業規制法が平成18年12月に改正され、およそ3年を目途にグレーゾーン金利も撤廃されることとなりました。また、過剰貸付規制も強化され、多重債務者の発生が大幅に抑制されることが期待されています。いずれ過払金返還請求の必要もなくなるでしょうが、サラ金業者への支払いを誠実に続けた人の中には、今からでも過払金返還請求が可能な方がいらっしゃいます。あとしばらくは過払いに関する最高裁判決が続くでしょう。