最近の消費者判例

弁護士国府 泰道

 最近の消費者法ニュースや兵庫弁護士会のホームページなどに掲載されている消費者判例で、注目すべきものをいくつか拾い集めました。サマリーを紹介します。皆さんの実務の参考に供してください。

1 貸金

取引履歴の開示

最高裁 平成17年7月19日判決 キャスコ(朝日新聞 平成17年7月19日、最高裁ホームページ)

 「消費者金融会社は借り手側に、その借り手との取引履歴を開示する義務があり、開示しなかった場合は損害賠償義務を負う」という初判断を示した。この事件は、差戻審で、慰謝料25万円を支払うことで和解が成立している(朝日新聞 平成17年10月5日)。

大阪高裁 平成17年5月12日決定 オリコ(兵庫弁護士会)

 「法的な保管義務の点はさておき、貸金業者が、借入と返済が反復継続中の顧客のコンピューター処理をしている取引履歴につき、その情報管理には格別の場所や費用も必要としないと思われるのに、あえてこれを消除するとは容易に考え難いところである。」として、10年以上前の取引履歴の開示を認めた原審決定を支持した。

みなし弁済

大阪高裁 平成17年3月24日判決 シティズ(兵庫弁護士会)

 貸金業規制法43条の趣旨に照らせば、利息制限法の制限利率を超える利息及び損害金の支払が事実上にせよ強制されるような契約条項の下に、やむなく支払われたというべき場合などは、債務者の自由な意思によって任意に支払われたものとみることはできないとして、みなし弁済の規定の適用を排除した。

最高裁 平成16年7月9日判決 イッコー、SFCG(消費者法ニュース61号)

 (1)利息天引についてはみなし弁済の適用がない、(2)18条書面は、 弁済の都度、 直ちに交付することが義務付けられているのであるから、その交付は弁済の直後にしなければならず、イッコーの場合は、弁済を受けてから7ないし10日以上後に借主に対して領収書を交付しているが、これでは、上記弁済の直後に18条書面を交付したものとみることはできない、と判示した

2 消費者契約法

損害金の約定

東京高裁 平成16年5月26判決(判例タイムズ1153号275頁)

 平成13年4月1日の消費者契約法施行以後に締結された信用保証委託契約に基づく遅延損害金の定めについて消費者契約法が適用され、年14.6パーセントを越える部分が無効とされた事例。 不退去による取消と取消権の消滅時効の起算点

東京簡裁 平成15年5月14日判決(消費者法ニュース60号)

  若者に対する展示場にける絵画販売の事案で、不退去により困惑させて契約したものであるとして、消費者契約法4条3項2号により立替払契約自体の取消しを認めた事案。
 契約から6カ月と8日経過した時点で取消の意思表示をしている点については、契約から約2ヶ月後に販売店から呼び出されて受け取りをしないのに納品確認書に署名させられたときまで困惑した状態が継続しているとして、契約から2ヶ月後の署名時から6ヶ月は取消ができるとした。

敷金返還請求

大阪高裁 平成16年12月17日判決(兵庫弁護士会)

 消費者契約法施行前に締結された賃貸借契約であっても、法施行後に更新合意がなされていれば同法の適用はある。
 自然損耗等についての原状回復費用を賃借人に負担させる特約は、民法の任意規定の適用による場合に比し消費者の義務を加重し、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するとして消費者契約法10条に違反し無効である。

神戸地裁 平成17年7月14日判決(判例時報1901号87頁)

 敷引特約に関していくつか判決がなされているが、本判決は、敷引特約の性質について理論的な検討を踏まえ、敷金30万円のうち25万円を差し引く敷引特約は、消費者契約法10条により無効であると判断した。 敷引きの性質については、(1)賃貸借契約成立の謝礼、(2)賃貸目的物の自然損耗の修理費用、(3)賃貸借契約更新時の更新料免除の対価、(4)賃貸借契約終了後の空室賃料、賃料を定額にすることへの代償等の要素が渾然一体になったものとし、これらの各要素について敷引きをする合理性は認められないと判断している。

3 割賦販売法

金銭消費貸借への割賦購入あっせんの適用

福岡地裁 平成16年8月27日判決 (兵庫弁護士会)

 本件各契約は金銭消費貸借契約の形式をとっているが、特定の販売業者であるアサヒが行う購入者への販売を条件として、代金額相当額をアサヒへ交付し、被告らから2月以上、かつ3回以上に分割して金額を受領するいわゆる個品割賦購入あっせんの実質を持つと認められるとして、抗弁対抗を認めた。

【参考】インターネットによる判例調査