非嫡出子の相続分の合憲性

2012年6月5日

文責:弁護士岡 文夫

非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法900条4号但書の合憲性について
(大阪高裁平成23年8月24日決定:判例時報2140号・19頁~)

1 民法900条4号但書を合憲とする最高裁決定

 最高裁平成7年7月5日決定は、民法900条4号但書は、憲法14条に違反せず、合憲であるとした。その理由は、民法900条4号但書は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、非嫡出子の立場も配慮して、定めたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護との調整をはかったものであるから、合理的根拠があり、立法府の裁量判断の限界を超えたものではない、というものであった。

2 大阪高裁平成23年8月24日決定

 本件決定は、民法900条4号但書を、法律婚の尊重という立法目的との合理的関連性を欠いており、憲法14条1項、13条及び24条2項に違反して、無効であると判断した。その理由は、嫡出子と非嫡出子によって国籍取得に区別を認めている国籍法の条項は、憲法14条1項に違反していると判断した最高裁平成20年6月4日判決を引用したうえ、(1)平成7年以降、法制審議会における相続分平等化などを内容とする答申が出たこと、(2)婚姻・家族生活・親子関係における実態の変化、国民意識の多様化、(3)市民的及び政治的権利に関する国際規約により設置された委員会の意見、(4)諸外国における国際的な区別撤廃の進捗、(5)戸籍や住民票において嫡出、非嫡出の区別がされない表示になってきたこと、このような事情を考慮すれば、法律婚を尊重するという民法の目的と、嫡出子と非嫡出子との相続分に区別と設けることが合理的に関連するとは言えない、というものである。

評釈

 本件決定は、下級審の判例ではあるが、極めて適切な判断と思われる。しかも、高裁で確定した。平成7年最高裁決定後、本件決定と同様の判断をした下級審判例がいくつか出されている(名古屋高裁平成23年12月21日判決、東京高裁平成22年3月10日判決)。そのうち上告されたものものもあるので、この論点について、再び、最高裁判所の判断が出される可能性があるが、平成7年最高裁決定でも、5名の裁判官の反対意見が出されていたこと、同決定から既に17年が経過していること等を考慮すれば、平成7年最高裁決定は変更される可能性も高いであろう。

以上