仕組債
証券会社等が、日経平均株価や為替に連動していて高配当が得られるという商品を売っていますが、高リスクであることを隠していることが多くあります。
Q&A
-
Q1
-
【公募仕組債(「日経平均株価連動債券」等)について】
取引口座を持っている証券会社から一流の外債で金利の高いものがあるとして「日経平均株価連動債券:10年満期」を勧められて購入しました。なお、目論見書を渡されましたが読んでおいてくださいと言うだけでした。しかし、後日、「ノックイン」したので、金利も低くなり、満期時には元本割れの可能性がかなり高くなった、と言われました。当初の説明と大きく違うので納得できません。どのようにすれば良いでしょうか。
-
A
-
最近、このような新種の金融商品によって被害を蒙ったとの相談が増えています。さて、あなたの購入した「債券」の販売用資料を見せていただくと、「ノルウエ-輸出金融公社」発行の「10年満期」「ユーロ米ドル建て」「期限前償還条項付」「日経平均株価指数連動」「デジタルクーポン」債券との見出しが付いています。ノルウエ-輸出金融公社(∗)が発行した「米ドル建て」の「社債」の形式を採っていますが、多くの個人投資家に馴染みのある伝統的な「社債」(外債を含む)とは「似て非なる」金融商品です。
(∗)その他、欧米の一流金融機関が発行者になっていることが普通です。
伝統的な「社債」なら、10年間に一定の利率で利息金を受け取り、10年後に元本全額が償還されるのですが、あなたが購入した金融商品では、利息の利率と元本償還の金額が日経平均株価指数(以下「日経平均」と略称)の推移によって変動する仕組みが組み込まれています。その結果、次のようなことが生じます。受取り利率については、当初はかなり高い利率(例えば年利10%)なのですが、日経平均が或る一定価格(利率判定価格)より下落した場合には受取り利率が極端に低い利率となります(例えば年利0.1%)。元本償還については、もし、日経平均が或る一定価格(ノックイン価格)より下落し、10年後に元通りの価格に回復しなければ、満期時の元本償還は日経平均の下落率に応じた金額しか償還されません:元本割れとなる次第です。その一方で、日経平均が値上がりして或る一定価格(トリガー価格)を超えた場合には、それで打ち止めとなり、元本がその全額が償還されます:株価下落の場合には下落率に応じた元本割れが生じますが(言わば減額償還)、上昇した場合には上昇率に応じた償還(増額償還)ではなく、元本金額のまま償還されるだけと言う次第です。なお、もし、中途売却しようとした場合には、大きな損失が生ずると言うことにもなっています。
この金融商品には日経平均に連動する複雑な条件(仕組み)が組み込まれていることから「株価連動仕組債」と呼ばれています。
この「仕組債」は、目先の金利は高いのですが、その反面、複雑な仕組みが分かり難いと共に、日経平均に連動して利率と償還金額が変動する点で、伝統的な社債(外債を含む)に比べて、投資判断が難しく投資リスクも高い、という特徴があります。従って、株式投資の知識経験が豊富でない方や目先の高金利の背後には高いリスクが隠れていることを理解できない投資家には相応しい金融商品ではありません。
あなたには相応しくないものであったようですし、当初の説明と大きく食い違うということなら、速やかに中途売却するのが望ましいことです。しかし、その場合には、元本割れ(損失)が生じます。その損失は、その「仕組債」があなたに相応しくなかったこと及び当初の説明が不十分であったこと(あなたが良く理解できないまま買わされたこと)に起因していますので、そのことを証拠立てて、販売した証券会社に損害賠償を求めることができます。但し、残念ながら、証券会社は、あなたに相応しいものだった、説明も十分したと反論して取り合わないことが多いでしょう。その場合には、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。
-
Q2
-
【私募仕組債(外国銀行の「パワーデュアル債(円/米ドル):30年満期」等)について】
私も(Q1と)同じように、取引口座を持っている証券会社から一流の外債で金利の高いものがあるとして、外国銀行の「パワーデュアル債(円/米ドル):30年満期」を勧められて購入しました。一応「30年満期」だが、実際には、4~5年で「早期償還」される、とのことでした。なお、「外国証券内容説明書」と言う1枚ものの説明書は渡されましたが、目論見書は渡されていません。しかし、後日、「ノックイン」したので、金利も低くなり、30年持ち続けることとなる可能性が高まった、また、満期時には元本割れの可能性も高い、と言われました。当初の説明と大きく違うので納得できません。どのようにすれば良いでしょうか。
-
A
-
あなたが購入した金融商品も、Q1の「日経平均連動」の「仕組債」と似たもので、連動対象が「外国為替(円/米ドル)」であること、30年満期の「超長期債」であること、「私募債」であること、等に相違があります。特に「私募債」は、一般の(多数の)投資家を対象に販売するもの(これを「公募債」と言います)ではなく、多額の投資資金を保有し投資の知識経験が豊富な少数の投資家に向けて組成販売されるもので、それゆえに、内容を詳しく説明した一般向け書類である「目論見書」を渡されることがありません:そのような詳細事項は自分で調べてくださいと言うことです。この「仕組債」は「為替連動(仕組)債」と呼ばれるもので、外国銀行の社債(銀行債)を基礎にしつつ、利息の利率と元本償還の時期と金額が「外国為替(円/米ドル)」の推移によって変動する仕組みが組み込まれています。その結果、伝統的な社債とは「似て非なる」ものとなり、次のようなことが生じます。受取り利率については、当初はかなり高い利率(例えば年利10%)なのですが、円/米ドル(為替)相場が或る一定価格(利率判定価格)より下落した場合には受取り利率が極端に低い利率となります(例えば年利0.1%)。元本償還については、もし、円/米ドル(為替)相場が或る一定価格(ノックイン価格)より下落し、30年の間に元通りの価格に回復しなければ、30年の間その「仕組債」を持ち続けなければなりませんし、30年後の元本償還は円/米ドル(為替)相場の下落率に応じた金額しか償還されません:元本割れとなる次第です。その一方で、円/米ドル(為替)相場が値上がりして或る一定価格(トリガー価格)を超えた場合には、それで打ち止めとなり、元本がその全額が償還されます:為替下落の場合には30年間保有となり下落率に応じた元本割れが生じますが(言わば長期拘束と減額償還)、上昇した場合には上昇率に応じた償還(増額償還)ではなく、元本金額のまま償還されるだけと言う次第です。なお、もし、中途売却しようとした場合には、大きな損失が生ずると言うことにもなっています。
この「為替連動仕組債」は、Q1の「株価連動仕組債」と同様、目先の金利は高いのですが、その反面、複雑な仕組みが分かり難いと共に、円/米ドル(為替)相場に連動して利率および償還の時期と金額が変動する点で、伝統的な社債(外債を含む)に比べて、投資判断が難しく投資リスクも高い、という特徴があります。従って、為替変動の知識経験が豊富でない方や目先の高金利の背後には高いリスクが隠れていることを理解できない投資家には相応しい金融商品ではありません。
あなたには相応しくないものであったようですし、当初の説明と大きく食い違うということなら、速やかに中途売却するのが望ましいことです。しかし、その場合には、元本割れ(損失)が生じます。その損失は、その「為替連動仕組債」があなたに相応しくなかったこと及び当初の説明が不十分であったこと(あなたが良く理解できないまま買わされたこと)に起因していますので、そのことを証拠立てて、販売した証券会社に損害賠償を求めることができます。但し、残念ながら、証券会社は、あなたに相応しいものだった、説明も十分したと反論して取り合わないことが多いでしょう。その場合には、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。
-
Q3
-
【仕組投信(銀行等から勧められる「ノックイン投信(投資信託)」等)について】
これまで私たち夫婦の貯蓄は銀行預金と郵便貯金だけでした。しかし、余りに預貯金金利が低いので、金利の良いものはないかと思っていたところ、なじみの銀行員から、投資信託を勧められました。その内容は良く分からなかったのですが、私たちに相応しいものを勧めてくれていると思って購入しました。しかし、後に、銀行店舗へ出向いた際に、株価が下がったので、その投資信託もかなり値下がりした、と聞かされました。話が違うと申出ましたが、聞き入れてくれません。どうすれば良いでしょうか。
-
A
-
最近は、証券会社だけでなく、銀行や郵便局でも、投資信託を販売しています。しかも、投資リスクの高いものも少なくありません。あなたが購入した投資信託は、「株価が下がったので」「投資信託も値下がりした」とのことですから、「ノックイン投信(投資信託)」と呼ばれているものです。その仕組みはおおよそ次のようなものです。投資信託は、一般的には、様々な種類の証券(∗1)を組み込んで組成され運用されますが、この「ノックイン投信」は「仕組債」と呼ばれる証券(∗1)に集中して組成・運用されます。有体に言えば、銀行は表向きには「仕組債」そのものを販売することができないので、投資信託と言うオブラードに包んで販売しているという次第。
その「仕組債」とは、Q1,Q2で紹介した内容の証券(∗1)で、日経平均株価指数(∗2)などの推移と連動して、支払利息(利率)や満期償還金額が変動すると言う複雑な仕組みを採っています。
(∗1)最近では「金融商品」という言い方が多くなっています。
(∗2)日経平均とか平均株価とか(単に)株価指数などと略称されます。
株価指数が下がれば、利率も下がり、満期時には元本割れが生じることがあります。「ノックイン」「ノックイン株価」と言うのは、そのように利率下落や元本割れが生じる境界水準(株価)に達することを意味しています。そのような仕組みと性質から、「ノックイン投信」を購入するには、株式投資の知識と経験が豊富なこと、それによって満期時までの株価指数の動向を見通すことができること、複雑な仕組みを理解して利害得失を判断できること、等が必要で、そうでない言わば素人投資家には相応しいものとは言えません。
話が違ったとして中途解約するとかなり元本割れが生じます。他方、ノックインしてしまって後、満期まで保有しても、もし、株価指数が上昇し回復した場合には、元本全額が償還されることもありますので、どのようにするか悩ましいところです。しかし、そもそも素人投資家には相応しくないものであり、ノックインしてしまった後には、ますます株価指数が下落して、満期時の償還金額がより大きく元本割れすることも考えられますので、やはり、思い切って、中途解約することが望ましいでしょう。その場合には、元本割れ(損失)が生じます。その損失は、「ノックイン投信」があなたに相応しくなかったこと及び当初の説明が不十分であったこと(あなたが良く理解できないまま買わされたこと)に起因していますので、そのことを証拠立てて、販売した銀行に損害賠償を求めることができます。但し、残念ながら、販売銀行は、あなたに相応しいものだった、説明も十分したと反論して取り合わないことが多いでしょう。その場合には、個人投資家の証券被害に詳しい弁護士に相談してください。