名簿屋問題

2016年8月3日

弁護士国府 泰道

 カモリスト、名簿が、詐欺的な電話勧誘の重要なツールになっている。
 消費者庁は、名簿業者の実態調査を行い、今年3月「名簿販売業者における個人情報の提供等に関する実態調査報告書」を公表した。
 個人情報保護法では、個人情報の第三者提供については本人同意が必要であり、この種の名簿の売買は個人情報保護法違反となる。しかし、現実にはまだ名簿の売買がなされている実態が明らかになった。
 2015年7月18日日本弁護士連合会の夏期セミナー「個人情報保護法改正―ビッグデータ利活用」で新潟大学の鈴木正朝先生から興味深いお話を聞いた。
 名簿屋問題について、当初、政府は「検討課題」とするだけで先送りしようとしていた。
 しかし、視点を「消費者」から「企業的視点」に変えて提案した。名簿を持ち出す社員は防ぎようはない。悪意の人間に対ししてセキュリティはできない。彼らが名簿を持ち出すのは、それを買ってくれる名簿屋がいるから。企業のセキュリティには、名簿屋をなくさなければならない。
 これで一気に流れが変わったという。個人情報保護の必要性をいくら訴えても、法規制の必要性について認めようとしなかったのが、企業のセキュリティの観点から話をするだけで、法規制が必要だという流れになったというのである。
 なんという企業社会なのかと呆れてしまうが、これが現実でもある。