「不招請勧誘の禁止」規制の骨抜きは許されない

弁護士向来 俊彦

 「不招請勧誘の禁止」と言われてもピンとこない方が多いかもしれません。
 耳慣れない言葉ですが、投資被害を根本的に解決するためには実はとても大事な規制です。「不招請勧誘の禁止」とは、金融商品取引や先物取引などについて、希望していない人に対しては電話・訪問による勧誘をしてはならないというルールのことです。
 以前からその必要性については議論されていましたが、平成17年に初めて、金融商品取引のうちの店頭デリバティブ取引(FXなど)が規制されたほか、商品先物取引の分野では、ようやく平成23年1月1日施行の改正法において導入されました。
 しかし、この「不招請勧誘の禁止」規制が、導入されたばかりなのに、もはや骨抜きにされようとしているのです。
 当初は、金融庁が、規制緩和の名のもとに、将来新たな総合取引所をつくる際、取引所における商品先物取引に関しては不招請勧誘の禁止の対象外にして自主規制規則で対応するという方針を打ち出したことが問題の始まりでした。
 私たち消費者弁護士は、せっかく平成23年1月1日から導入されたばかりなのに、何らの検証もせずに規制を緩和すれば、またぞろ悪徳業者が一人暮らしの高齢者を狙って電話をかけたり訪問したりして勧誘を始め、多くの被害が発生すると考えました。総合取引所ができるといっても、規制を緩めることを正当化することにはなりません。内閣府消費者委員会からも反対の旨の建議が提出され、全国の弁護士会からも反対の意見表明がなされました。国会議員へのロビー活動も行い、与党内において公明党の理解を得ることができました。こういった種々の活動の成果もあって、金融庁は、実質的には不招請勧誘の禁止を維持するのと同じような効果が期待できる政令改正案等を提案するに至りました。
 ところが、今度は、経済産業省及び農林水産省が、突然、省令を改正することによって現行法の不招請勧誘の禁止を骨抜きにしようと動き出したのです。これには全く大義名分がありません。先物取引業者が新しい総合取引所(金融庁の所管)に流れてしまうと自らの天下り先がなくなるので規制を緩和したのではないかと勘ぐってしまいます。
 商品先物取引法という「法律」で不招請勧誘が禁止されているのに、その下位規範である「省令」によって、ほとんどの場合について不招請勧誘の禁止の例外にあたるようにして、規制を骨抜きにしてしまうことなど許されることではありません。
 日本の裁判所は、なぜか違法な勧誘・取引をした業者側に優しく、被害者側に厳しいので、裁判に勝っても過失相殺がつきものです。また、明らかな詐欺の場合には、裁判に勝っても回収が困難です。そのため、事後的救済には限界があります。悪徳業者による被害をできるだけ少なくするための法整備が必要です。
 もっともらしく経済優先・規制緩和が理由にされたりしますが、不招請勧誘禁止を廃止しても、一般大衆とりわけ高齢者を先物取引に巻き込むことになるだけで、決して経済の活性化にはつながりません。自分の親が「望んでもいない」先物取引に巻き込まれるかもしれないと思うと、皆さん、そのような迷惑な勧誘は規制してほしいと思われるのではないでしょうか。それが市場取引であろうと、店頭取引であろうと、勧誘主体が証券会社であろうと、先物取引業者であろうと、変わりはありません。
 少なくとも、規制緩和の名のもとに、何ら検証することもなく、一方的に不招請勧誘の禁止が廃止されることだけは避けなければならないと考えています。